キミが教えてくれたこと(改)
「ちょっと!どこ行くのっ…!」
息絶え絶えに歩幅の違う天野君に着いていくが、当の本人はニコニコしてるだけで何も言わない。
そして今は使われていない校舎の裏にすっと入っていく。
それを追いかけるように急いで校舎に向かった。
「はぁっ、一体何がっ…」
そこで言葉は止まった。
誰もいない静かな校舎裏にはあたり一面にたくさんの桜が花びらを揺らし咲いていた。
「綺麗…」
思わずそう言葉を漏らしてしまった。
学校内に桜の木は何本かあるが、こんなに密集して咲いているのは見たことがない。
風が吹くとふんわりと桜が舞い散り、雲ひとつない空と地面の緑がより幻想的に桜の色を際立たせている。
「ここ、俺のお気に入りスポット。ここの校舎はもう使われて無くて誰も寄りたがらないから一人でいたい時はたまにここに来る」
「天野君でも一人になりたい時があるの?」
「たまにな!」
「どんな時?」
私の問いにんー、と腕を組んで考える。
「先生に怒られた時とか、テストの点が悪かった時…とか?」
その答えに思わず笑みが溢れてしまった。
「ふふっ、子供みたい…」
天野君は私の反応に一瞬ムッとしたがすぐに笑顔になった。
「友達記念。ここのことは誰にも言うなよ?」
そう言いながら私に手を伸ばし、天野君の手が前髪に触れる。
私は肩を竦め彼の指先を辿ると桜の花びらが1枚天野君の手の中にあった。
どうやら吹雪いた桜が私の頭に付いていたらしい。
笑顔のまま手のひらの花びらを風に乗せて花びらが飛んでいくのを見送ると彼は私に背を向けて桜を見ながら歩いていく。
私は赤くなった顔を隠すように彼の指先が当たった前髪を軽く撫でた。
彼の突発的な行動はとても心臓に悪い。
きっと無意識でやってるんだろうな…。
ドキドキと鳴る心臓を落ち着かせるように右手で胸を押さえた。