キミが教えてくれたこと(改)
ーー俺、天野晴人!よろしくな!
ーーあ、そうだ、茉莉花。"バタフライ効果"って知ってるか?
ーーすげぇカッコ良かったよ、茉莉花。
ーー茉莉花、好きだよ。誰よりも。茉莉花が一番。
「晴人っ…!!」
そうだ!私を変えてくれたのは、私をずっと支えてくれてたのは晴人だ!
どうして忘れてしまってたんだろう…っ!
晴人と過ごした日々が頭の中に映像として大量に流れ込んでくる。
涙が溢れ、掛け布団の中に入っている晴人の右手を握った。
「晴人…、晴人の事忘れちゃっててごめんね…っ」
いつもこの手が私を包んでくれた、いつもその唇が紡ぐ言葉で私に前を向かせてくれた。
「晴人、言ってくれたよね…。私と出会う為にあの姿で存在したんだって…」
晴人からの返事は無い。
もしかしたらずっとこの眠った状態のままで意識だけが具体化して存在してたのかも…。
「…私ね、大袈裟かもしれないけど、晴人と出会う為に生まれてきたのかもしれないって…思ってるんだよ…」
あの日、晴人が声をかけてくれた日からモノクロの世界が鮮やかに色づいた。
「晴人っ…晴人…!私、晴人がいないと生きてけないよっ…」
意識の無い晴人の手を両手で握りしめて自らの額にあてがう。
「晴人っ…私、晴人が好きだよ…っ!だから、お願いっ…!」
もう一度、私の名前を呼んで…ーーー
「…甘えた…め…」
掠れた声に私は勢いよく顔を上げた。
「ま、りか…。泣い…てんのか…」
薄く開いた目が私に向き、晴人は途切れ途切れに言葉を発する。
「晴人っ…!!」
「ど、した…?なんか、あった…か?」
こんな時にでも君は私の心配をするんだね。
「…晴人と出会えた事が嬉しくて…、涙が溢れてくるんだよ」
晴人の右手が私の頬に触れる。
その手は柔らかく、温かい体温を感じられた。
「…おれ、も。まりかに…あえて、よかった」
紡がれた言葉達が、すっと私の中に溶けていく。
私の頬に触れていた晴人の手がゆっくりと襟足の方へ向かい、その手が晴人の顔に引き寄せるように力が入った。
私は引き寄せられるまま、晴人へと倒れ込む。
窓から差し込むオレンジの光が私達を照らし、伸びた影が重なり合った。