キミが教えてくれたこと(改)
「プール楽しかったね〜!」
「ウォータースライダーもあったし、広くてスパもあって最高!」
「みんなが楽しんでくれて良かった!また行こうね!」
「あと道下さんのスイーツ店巡りも良かったね!」
夏休みに入り楽しみにしていたプールに行った後、私達4人は一日を振り返りながら話しに花を咲かせていた。
「…で、お前らは自分達だけ楽しんで土産とかねぇのかよ」
そう、それも晴人の病室で。
「仕方ないでしょ〜?晴人君、まだ精密検査受けてるところだし食べ物は持ち込めないって言われてるんだから〜」
「それにほら、こんなにいっぱいお見舞いの品が来てるんだからそれで我慢しなよ」
山内さんが晴人の周りにずらりと並ぶクラスメイトからのお花や漫画、雑誌などを指さした。
「花は食べれないだろっ。あーっラーメン食いてぇー!」
胡座をかき、頭を抱える晴人に私達はクスクスと笑った。
「おい、茉莉花。看護師さんに内緒でラーメン買って来てくれよ!」
「な、なんで私が!私は晴人のメイドじゃないんだからね!」
「おおー、メイドか。いい響きだな。よし、"ご主人様"って言ってみ?」
「何言ってんの!?馬鹿じゃないの!言うわけないでしょ!」
顔を赤くする私に晴人は意地悪そうな顔で笑う。
「…ねぇ、ずっと思ってたんだけど」
山内さんが静かに私達の会話を遮る。
「茉莉花ちゃんと天野君ってどういう関係なの?」
その質問に私は眉間に皺を寄せた。
好きとは言われたけど、それは晴人の意識が具体化してた時だし…。
晴人が目覚めた時、き、キスはしたけど、付き合うとかそういう話しはしてないし…。
頭をフル回転させながら考えるが、自分自身も私達の関係に何て名前を付けていいかわからなかった。
「別に、怪しむ様な関係じゃねぇよ」
「………」
晴人のその一言にズキンと胸が痛んだ。
そっか、晴人にとって私は特別な存在じゃないんだ…。
「そろそろ面会時間が終わりますよー」
ドアをノックして入って来た看護師さんに私達は急いで身支度をした。
「じゃあまたね、晴人君!」
「来週学校で会おうね!」
「おう、ありがとなー」
3人が前を歩き、最後に腰を上げ病室を出て行こうとした時ぐいっと腕を引き寄せられた。
「わっ、な、なに?」
犯人は言わずもがな晴人。
「…またな。」
晴人はみんなに向けていた悪戯な笑顔では無く、目尻を下げ優しい眼差しでそう言い引き寄せた手で私の掌を数回撫でた。
「う、うん。またねっ…!」
名残惜しそうに私達は手を離し、「茉莉花ちゃん早くー!」と言いながら病室の前で待っている3人の元へ急いだ。