キミが教えてくれたこと(改)
「天野晴人、復活いたしましたー!!」
夏休み明け早々、晴人は教卓を退け一段高くなっている黒板前に立ちクラスのみんなにピースサインを向ける。
晴人の声に登校して来たクラスメイト達は大きな拍手を送っている。
そんな光景を見ると晴人はクラスのムードメーカーだったのだと再認識させられた。
「「わっしょいわっしょい!!」」
男子達が晴人を肩車し、掛け声を合わせて教室を練り歩く姿を見て笑いが込み上げてくる。
「天野君、本当にもう大丈夫なの?」
「ああ。こないだ精密検査して何の異常も無かったから大丈夫だって医者が言ってたよ。心配してくれてありがとな!」
「そうなんだー!良かったー!」
「………」
実際、生身の晴人が私以外の女の子と話しているのを目の当たりにすると何とも言えないモヤモヤした気持ちになってしまう。
「まーりかちん!おはよ!晴人君復活したんだね〜!」
そこへ登校して来た道下さんが私の後ろから声をかけてくれた。
「うん。検査結果も良かったみたい!」
「そうなんだ〜!良かった!ところで茉莉花ちん」
道下さんはニヤリと笑うと私の肩を引き寄せた。
「お主、明日の放課後は空いてるかの?」
「明日?」
「そう!中学の時の同級生が男の子紹介してくれるって!何人か呼んで遊ぼうって言ってるんだけど、茉莉花ちゃんも行こう!」
「えーっ…と…」
「ダメ」
そんな私と道下さんの会話に入って来たのは晴人だった。
話題の中心にいた晴人が私達の間に入ったため、みんな「なんだなんだ」と周りに人だかりができる。
「な〜に?晴人君。何でダメなの?」
「ダメなもんはダメ」
「いいじゃん、茉莉花ちんも行きたいよね?」
「えっとー…」
「何言ってんだ。行かせるわけねぇだろ」
晴人の言葉に道下さんは首を傾げる。
「何で茉莉花ちんは行っちゃダメなの?」
道下さんの言葉に晴人はぐいっと私を引き寄せた。
「コイツは俺のなの。他の男に渡すわけねぇだろ」
教室に数秒間の沈黙が流れる。
「「「えええええええ!?」」」
「ええええ!?」
「って、何で茉莉花ちんまで驚いてんの!?」
だ、だってそんな話し全然してないしっ!
「なんだよ茉莉花。お前は俺に会う為に生まれてきたとかなんとか…」
「ぎゃあああ!!なに言ってんの馬鹿じゃないの!!」
晴人の腕の中で私は顔を真っ赤に染めながら晴人の胸を叩く。
「とにかく、茉莉花は俺の彼女だから明日は行かねぇ!以上!解散!」
「ええ!?ちょっ、晴っ…!」
そのまま晴人は私の手を引いて教室を出て行った。
クラスメイト達の叫び声や口笛が走っていた廊下に響き渡る。
私はなにがなんだか分からず、私の手を引く晴人の後ろ姿を見ることしか出来なかった。