キミが教えてくれたこと(改)


「自分に自信が無いとさ、周りの目が気になったり嫌われるのが恐かったり、自分を否定されるんじゃ無いかって思っちゃうよな」


天野君は桜に目をやりながら唐突に話し出した。


「そんな自分を知られたくなくて、誰も傷つかないように人に合わせたり。だけどそんな自分が嫌になったり」


そう、ずっとずっとそう思ってた。
無視されるのが、悪口を言われるのが、自分を否定されるのが恐くていつも自分の気持ちを隠してた。


「でもさ、そんな茉莉花を受け入れてくれる人も必ずいる。この世界は茉莉花が思ってるよりずっと広い」


視界がぼやけて天野君の笑顔が揺れる。


「まずは俺が茉莉花を受け止めるからさ。少しずつ、自分を好きになることから始めよう」


な?と優しく私に問いかける。


こんな私にも寄り添ってくれる人がいるんだーー


そう思うと今までの苦しみが涙として目からボロボロと溢れ落ちていくようだった。


「他の誰かじゃなく、茉莉花自身はどうしたい?どういう人になりたい?」


私の願いなんて、とてもちっぽけだ。
他の人達からしたらすごく簡単なことなんだと思う。
だけど、口に出した事は一度もなかった。
そんなこと、と思われるんじゃないかって言えなかった。



「わたし…はっ…」


目の前の天野君は私の言葉を待つようにゆっくり笑顔で頷いている。



「友達が欲しいっ…自分をもっと好きになりたい。ーー強くなりたいっ…!」


自分の本当の気持ちを話せるように、卑屈にならず前を向けるように。


「よくできましたっ」


天野君は屈んで私の目線に合わせると右手で優しくポンポンっと頭を撫でた。


「よし!じゃあ改めて!」


天野君の声に瞬きを数回繰り返す。



「俺の名前は天野晴人!O型、好きな食べ物はハンバーグ!よろしく!」


「え、えっと、林茉莉花。A型…好きな食べ物はカスタードプリン……って、それいる?」


思わず天野君につられて好きな食べ物まで答えてしまった。

天野君は、ははっと声を出して笑い、私も同じ様に笑った。


ひとしきり笑い終え、もう一度満開の桜に目をやる。



「綺麗だね」

「ああ」


ここから始めよう。

新しい世界へ。




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