もしもの話が嫌いな君は、
「じゃあ、行って来るね!」

「はいはい。汚さないように気をつけて〜」


サンダルを履き、スカートの裾を払う。

行く準備は万端だ。


あとは……。


「陸!」

「ん?」

「一人で本当に大丈夫?」


たった一人の弟を置いていくんだもの、念を押しておかないと。


「何かと思えば……大丈夫だから」

「ちゃんとご飯食べなよ!」

「はいはい」

「部屋も散らかさないでね!」

「いいから行けって」

「それから………」

「たった1日いないことなんて、今までもあったじゃん。大丈夫だって」


呆れ顔の陸が、私の代わりに玄関の戸を開ける。



「それから、もしも、もしもね」

「バス行っちゃうぞ。ほら、早く…」


「もしも、寂しくなったら………」

「はいはい!寂しくねぇからいってらっしゃい!」



半ば強制的に、家から追い出される。

もう一言、陸に言っておこうかと取手に手をかけると、



「そんな心配性だったっけ?」



呆れ顔のシナが、迎えにいくよりも早く、私のことを待っていた。
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