もしもの話が嫌いな君は、
「………で、海の日だから海に行くのね」
「………嫌だった?」
「いや、海とか久しぶりだから、ちょっとワクワクしてる」
昨日に引き続き、雲一つない空の下。
一本で目的地に着くバスに乗りながら、私とシナの肩がくっついたり離れたりを繰り返す。
「眠いからちょっと寝てもいい?」
「あ、うん」
小さな欠伸をしたシナが、目を擦りながら聞いてきて。
私がそれに頷いて応えると、シナは私の肩に頭を乗せて目を閉じた。
この距離感は、今までも何度かあったから、急に騒ぎ出すなんてことはないけれど、
やっぱりちょっとドキドキして、
どうやら私に睡魔が訪れることは無さそうだ。
しばらくすると、スースーと寝息なんかも聴こえてきて、
ドキドキと同時に、愛おしさも込み上げる。
こっそり寝顔を覗いてみたら、私よりも長い睫毛が伏せられていて、愛おしさの他に恨めしさも込み上げた。