もしもの話が嫌いな君は、
1時間ほどバスに揺られていると、窓から海が見えてきた。


バスのアナウンスが終点を告げる。



「シナ、起きて」

「………んっ」

「もう着くよ」


まだ眠そうなシナを起こし、終点に到着したバスから降りた。



「潮のにおいがする」

「当たり前じゃん!すぐそこ降りたらもう海だよ!」

「久しぶりだな」


この海は、中学生の頃くらいによく来ていた海だった。

あの頃の私は、明日が来るのが嫌で嫌で仕方がなくて。


そんなときに、朝一緒に登校していたシナが、学校に向かわずに、今日と同じバスに乗って、この海に連れてきてくれた。


二人で海に入ったり眺めたり、辺りを探検したり、砂浜に寝転んで砂塗れになったりしながら一日過ごした。


学校から家に連絡がいって、親にはもちろんこっぴどく叱られたけど悲しくなんてなかった。



ここの海は私にとって、とっても大切なシナとの思い出が詰まった場所なのだ。
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