もしもの話が嫌いな君は、
「あれ?シナくん帰ってたの?」


呼びに行くよりも早く、陸が夕ご飯を食べにやってきた。

そして、俺を見て不思議そうな顔をする。


「陸……」

「今日は遅くなると思ってたのに〜」

「………何で俺が出かけたこと知ってんの?」

「だってそれは…………」


陸の言葉が詰まった。

陸も俺と同じように、変な違和感に小首を傾げいてる。



「………何でだっけ?」


答えが見つからなかったのか、うーんと唸りを上げている。


「………その弁当」


ふと、陸が持っている弁当箱に気がついた。


「あ、そうそう。おばさん!お弁当ありがとう!」

俺の視線の先を辿って、陸も弁当箱の存在を思い出し、母さんに渡す。


「これ、うちのじゃないわよ?」

「え?」

「自分で作ったじゃないの?」

「でも俺、今日一日家にいたから弁当なんて………」



まただ……。

また、違和感。


深い霧の中にいるみたいに、何もわからないままなのに、俺はその霧を抜ける方法を、確かに知っている。


いや、知っていた。



知っていたはずなのに、忘れてしまったんだ。
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