もしもの話が嫌いな君は、
「高校の卒業式以来だよね」

「そうだな。卒業式ぶりだ」

「県外の大学に進学したからさ、他の皆に会うのも卒業式ぶりなの」

「みんな、そんなに変わってないよ」


同じクラスになったことはないのに、俺と彼女は面識があった。

彼女は社交的だったし、俺の友達の誰かと知り合いだったからだっけ。


彼女とこうして二人で話すほど、親しくなったきっかけは思い出せないけど、おそらく俺の友達で社交的な早瀬か伊藤あたりと彼女が親しいのだろう。



「待ち合わせ場所知らなかったのか?」


俺は彼女に、なぜおれを迎えに来たのか、その理由を尋ねることにして切り出した。


「ううん。駅前だよね。知ってたよ」

「それじゃあ、俺に何か用でも………」



俺の横を歩く彼女を、少し距離が近いと思うのはなぜだろう。

俺は一体何と比較して、距離が近いと感じているのだろう。



「あたしさ、史波くんの家を誰かに教えてもらったことないの。

ただ、よく休みの日にあの辺を通ってさ」


そう話し出した佐弓の声は、あの夜みたいに震えていた。



「あの辺に友達の家なんかないのに、あたし、あの道を知っていたの。あたしがいつも向かう先の隣が、史波くんの家だったの」



そこまで言われて俺はようやく、彼女が何を言いたいのか理解した。

きっと佐弓も俺と同じように、二年前の違和感の答えを探している。


忘れちゃいけないはずの誰かを、探しているんだ。
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