もしもの話が嫌いな君は、
それから2人並んで帰路を辿る。

今日は雲一つない空だから、夜は綺麗な星空が見えるだろう。




「今日の夕飯はどうする?」



家まであと数メートルのとこまできて、シナがまた思い出したように言った。


「あ、昨日の夜、材料買ってきたから大丈夫!」

「俺が帰ってから、出かけたの?」

「あ。そうそう。毎日シナん家に迷惑かけられないし」


昨日散らかった部屋の片付けをシナが手伝ってくれて、その後にスーパーに行った。

荷物持ちの陸と一緒に、ここ数日は食べれるくらい買い込んできたのだ。


「へぇ」

「だから、今日の夜は大丈夫だよ」

「わかった」


シナはそっぽを向いて返事をすると、「じゃあな」と玄関までの数メートルを足早に歩いた。



「ちょ、シナ!なんで急に不機嫌?」

玄関の戸に手をかけるシナを慌てて引き止める。


「別に。不機嫌じゃないけど」

「嘘!なんかちょっと、拗ねてる顔してる!」

「は?…………拗ねてないから」

「いやいや、何年の付き合いだと思ってるの?シナが拗ねてるなんて私にはお見通……」

「じゃあな」



シナは私の言葉を遮って、家の中へ入っていってしまった。







………やっぱり、拗ねてるじゃん。

閉ざされてしまった玄関の扉は、ピクリともしない。





だけど、私は気にしない。

だって、知ってるもの。


明日になればシナはまた、いつもと変わらずに私と会ってくれること。
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