初恋のキミに、さよならを

「おーい、桜! こっち来いよ!」

声がして見てみると、美咲と話していたりくが私に手招きしている。

「おいでよ、桜」

笑顔の美咲が私を呼んでいる。

幸せそうな2人の間に私が入っていいのかな?

そう思いながら、恐る恐る2人の元に行くなり、りくに言われた言葉。

「桜とケンカしないと1日が始まった感じがしないから」

「はぁ!? 何よそれ!」

彼女がいる前でそれを言う?

意味が分からない!

またもや「その調子! その調子!」と煽ってくるりく。

ますます怒りが込み上げてくる。

「何がその調子よ! こっちはケンカしたくてしてたわけじゃないんだからね!」

「ふははっ! もとの桜に戻った!」

りくは吹き出して腹を抱えて笑っている。

‥‥‥もとの私に戻った?

「ここ最近、全然元気なかったからな」

合唱コンクールの練習中だってそう。

りくは、見ていないようでちゃんと見ていた。

だから、私を元気付けるためにわざとケンカを吹っかけてくるような真似を?

「桜、ごめんね。私たちのことで何だか気を使わせてしまって‥‥‥」と美咲がぽつりと言葉を漏らした。

「でも私、3人一緒にいることがとても楽しいから。だから、これからも私たちのそばにいて?」

と美咲の言葉に続けるようにりくも言った。

「そうだぞ、桜! ここにいていいんだよ!」

私は、とても嬉しかった。

2人にそう言ってもらえて。

それに、大好きな人に“ここにいていい”と言ってもらえたことに。

ますます“好き”が溢れた。
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