初恋のキミに、さよならを

「離れてしまっても桜のこと絶対に忘れない。“大切な友達”だから」

そう言って右手を差し出すりく。

“友達”から“大切な友達”に変わったことに、少しだけ嬉しかった。

「ありがとう、りく」

私もその手に右手を重ねた。

これは、仲直りの握手じゃなく、固い絆で結ばれた友情という名の証。

「もう行くね」

私は、その手をそっと離した。

これ以上、この場にいたら堪えている涙がでてしまいそうだったから。

「ああ、気をつけてな」

「元気でね、りく」

私は、笑顔で言うとりくも笑顔を浮かべた。

その笑顔を忘れないように胸の奥に刻む。

「桜も元気でな」

「うん」

そう返すと、車に乗り込んだ。
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