年下皇帝の甘い誘惑
「アルッティ!こいつを捕まえて、牢屋に入れろ!」

「はい!」

「おまえには、必ず涼花に土下座して謝ってもらうからな!」


そんな声がして、私はカイに抱き抱えられた。

「涼花。今直ぐに介抱してやるからな。」

もう、返事をする気力もなかった。

そのまま私は、カイの部屋に運びこまれ、お医者様に診てもらった。

「ショックが激しいようです。このまま養生してください。」

お医者様はそう言って、部屋を出て行った。


「ああ、涼花。俺を許してくれ。」

カイは、私の手を握った。

「少しの間でも、君の側を離れた俺の罪だ。暴力を振うと聞いていたのに、俺は……嫉妬して、自暴自棄になって、君の手を放してしまった。なんて愚かな男なんだろう。」

悔し涙が出る。

どうして私は、こんな目に遭わなければならないのか。

「すまない、涼花。目を開けてくれたら、二度と君の手を放さない。」


私は目を開けた。

「涼花!」

「今の言葉、本当?」

聞くとカイの目からは、涙が溢れていた。

「本当だ。愚かな俺を許してくれ。」

私はカイの顔に触れた。

まだ若いのだから、嫉妬するのは当然ね。

「もう二度と、私を離さないで。」

「約束するよ、涼花。」

私達の夜は、涙で暮れて行った。
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