年下皇帝の甘い誘惑
胸が締め付けられる。

「僕の側にいたら、日本へ返すって、叔父が言ったんだって?」

私は下を向いた。

「君は、昔の恋人に酷い目に遭わされて、このルシッカに来た。また日本に帰る事を、酷く恐れたんだろう?」

「ええ、そうよ。私、自分勝手なのよ。」


伯爵に脅されても、直ぐにカイに言えばよかったのよ。

でも、そうせずにお城を出たのは、私もどこかで、カイのお嫁さんには、なれないと知っていたから。


「君の気持ちを分かっていながら、君の側にいる事をしなかった。」

「仕方ないわ。私達、それぞれ仕事があるんだもの。」

するとカイは、私の額にキスを落とした。

「その忙しい仕事の合間に、こうして花束を持ってくる僕の気持ちは、解ってる?」

ハッとして、私は顔を上げた。

「僕はまだ、君への気持ちを諦めたつもりはない。」

「カイ……」

「ただ、僕の花嫁になって、この国を共に背負っていくには、君にも覚悟が必要だ。」

私の頭は、真っ白になった。
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