年下皇帝の甘い誘惑
『皇帝陛下は、待っているんじゃないかね。』

マーサさんの言葉を思い出す。

「君は、どうしたい?僕は、君の素直な気持ちを尊重するよ。」


その時の私は、後悔の念でいっぱいだった。

私は彼の5歳も上なのに、自分の気持ちばかりを優先させていた。

彼は私の5歳も下なのに、私の気持ちを一番に大切にしてくれる。

どちらが、人間的に上なのかは、人の気持ちを思いやれるかで、決まるのだ。


「いいね、涼花。君の気持ちが変わらないのなら、変る時まで花束を届け続けるよ。でももし、気持ちが変わったら。」

「変ったら?」

「その時は、お城に戻ってきてほしい。」

そう言ってカイは、背中を向けた。

「カイ……」

「涼花。また明日来るよ。」

カイは、優しい言葉を残して、私に気持ちを預けてくれた。

カイ、カイ。

何度も何度も、心の中でカイの名前を呼んだ。
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