キミと、光の彼方へ。
そんな風に嫌がっていた砂良だったけど、いざ競技が始まるとサングラスを外し、身を乗り出して応援していた。


「いっけー!海校ファイトーっ!」


さすが運動部。

お腹から声が出ている。

私も負けじと普段の何十倍も声を張り上げた。


「部長さーん!頑張ってくださーい!」

「うぇっ?!ぶちょー?!」

「うん」

「ぶっちょー!いっけいけー!」


色々とお世話になった部長さんは50メートル自由形の第1レースに登場した。

部長さんの泳ぎはダイナミックで、水しぶきを上げながら前へ前へと必死に泳いでいるのが印象的だった。

コース内でも2位になって、私は自然と顔が綻んだ。

3年生の先輩方が良い結果を残せないのは見ていて辛いし、最後だから歯を食い縛ってでも勝利を掴んでほしいと思っていたから。


「部長さん、良がっだね~」

「砂良、声大丈夫?」

「あはっ。...ゲホッ!う、うん...。大丈夫大丈夫!」


砂良はもう喉を崩壊させてしまったようだ。

これから海里の出番だというのに、ここで喉を潰されたらエールの力が半減してしまう。

砂良の喉を心配しながらも、競技を見守る。

次第に胸の鼓動が大きくなり、周りに聞こえてるのではないかと、汗が吹き出てくる。

私が泳ぐ訳じゃないのにこんなにも緊張してしまうとは、私は本当に小心者だ。

しかも毎年来ているのにこの緊張感にはちっとも慣れない。

そわそわし出して私は持ってきたハンカチを握りしめた。

このハンカチは母に名前の刺繍を施してもらった大切なものだ。

一度海に落として流され、海里に拾ってもらったことがある。

だから、これは海里と私を繋ぐものでもある。

海里......頑張れ......!

心の中で念力のように強く祈り、手を握った。

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