キミと、光の彼方へ。
「ん...んん......」


瞼を開けると灰色のコンクリートの天井が視界を占拠した。

私は、一体今どこにいるんだろう。

海里を探しに行ってもいなくて、途中からふらふらしてきて、倒れそうになって名前を呼ばれて......

そして、どうしたんだろう。


「珠汐奈?」

「ん?」


この声はきっと...


「海里?」

「オレの顔、見えてるか?」


私は頭をゆっくりと右側に倒した。

そこには、すっかり乾ききってボサボサヘアの海里がいた。


「良かった...海里だ...」


安堵が漏れた。

その言葉に海里の表情が少し緩んだ。


「急にオレの目の前で倒れたんだ。医務室に運び込んで点滴打ってもらったから大丈夫だと思う」

「そっか...。ありがと、海里」

「うん...」


海里はそっぽを向いた。

照れ屋だから、感謝されただけでも相当嬉しいみたい。

でも、私の言葉で照れてくれているんだから、いいと思わなきゃ。


「そうだ。海里、地方大会出場おめでとう。私、応援に行ってもいいかな?」

「というより、元からそういう約束だ。砂良にうるさく言われてるし...。そのために今日は泳いだ」


私のために......。

そんなこと言われたら熱が上がってきてしまう。

これ以上重症になったら、帰れないよ、私。

嫌いなあの人がいる病院送りだ。


「珠汐奈、顔赤い。熱上がって来たか?」

「ううん、大丈夫」

「なら、いいが」


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