キミと、光の彼方へ。
私の父は漁師で、海に出た後は1ヶ月以上帰ってこないこともしばしばあった。

だけど、帰ってきた時には私と遊んでくれたり、自分は苦手なのに、勉強を教えてくれたりもした。

砂汐奈が産まれてからは、病弱の母に代わって砂汐奈の面倒を見ながら、私のことも気にかけてくれて優しい父だった。

そんな父が亡くなったのは、今から5年前の夏。

父の乗っていた船が突然の嵐に見舞われ、近くを通っていた船と衝突。

その衝撃からかエンジンが漏れだし炎上。

船の乗員は皆助からず、海に沈んでしまった。

父がいなくなったことを私は受け入れられなかった。

当時3歳だった妹はお葬式の時もぽかーんとしていて、お坊さんの頭をいじるくらい、深刻な状況を理解していなかった。

おそらく、なんで周りの大人がこんなに泣いているのか全然わかっていなかったと思う。

だけど、私は11歳になっていて、これからどれだけ大変になるかおおよそ見当がついていた。

母は弱くて細い体を必死に削って働き、私達の生活を守ってくれていた。

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