キミと、光の彼方へ。
しかし、そんな生活は長くは続かず、母は病気で寝込んでしまった。

遠くに住む祖父母からの仕送りでなんとか生活を続けた。

何度も島を出なさいと祖父母に言われても、母は「せっかく友達が出来たのに、ここを出たら珠汐奈が可哀想」と断固拒否した。

母はそういっていたけれど、きっと1番の理由は、父が眠っている海から離れたくなかったのだと思った。

それは私も一緒だった。

父を忘れたくないから、ここに居続ける。

ずっと側にいる。

そう決めたんだ。

でも、父の死以後、私は水が怖くなり、海やプールに入ることが出来なくなった。

もともと泳ぎはへたっぴで、何度も溺れかけてはいたけれど、入りたくないなんて思うときはあまりなかったのに、だ。

父を奪っていったこの海を許すことも触れることもしたくないという心理が、大きく心を占拠していた。

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