キミと、光の彼方へ。
私は妹と並んでゆっくりゆっくり上っていった。

時に急勾配になり、運動不足の私は妹よりも息が上がってしまうほどだった。

体力を大分消耗してようやくたどり着いた時には太陽が激しく照りつけ、潮風も狂ったようにビュービュー吹いていた。


「なんかすごく風が強いね」

「お父さんの笑い方もこんな感じだったよ。豪快に笑って雨も風も嵐も吹き飛ばすような人だったんだ」

「ほぇ~。そうなんだぁ」


そう。

父の声は良く通る低温ボイスで、歌がすごく上手だった。

船の上の息抜きとして大海原のステージで歌い、磨きがかかった歌は聴いていて心地良かったのを覚えている。

その声であの日の嵐も吹き飛ばしてほしかったな...。

本当はもっともっともっと一緒に生きたかったよ。

成長を見守ってほしかったよ。

だって、私、お父さんのこと、大好きだったから。

線香に火を付けながら鼻をすすった。


「お姉ちゃん?」

「大丈夫。線香の煙に反応してちょっと涙出てきただけだから」

「ふぇ。お姉ちゃんって線香の煙アレルギー?」

「かもね」


妹がアレルギーという言葉を知っていることに驚かされたけど、うまく誤魔化せたのは良かった。

私は線香を置いて、砂汐奈と一緒に墓前に手を合わせた。

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