キミと、光の彼方へ。
「海里の好きな人、知ってるよ」


底からの静かな沸騰に任せて言葉が泳ぎ出す。


「会沢美海さん、でしょう?」

「分かってたのか?」

「なんとなく...ね。会沢さんはどんな子なの?」


泳ぎ出した言葉は自分で大きくて固い岩にぶつかっていく。


「明るくて真面目で、一見なんでもそつなくこなせそうだし、誰にでも好かれてて悩みなんてなさそうに見えるが、実はそうじゃない。色んなことに悩んでいて、それを一生懸命解決しようって必死になれる人だ。それに、不器用で少し抜けてるところが、見ていて心配になる。ちゃんと見ていなければって思ってしまうんだ」

「そっか...」


海里がここまで誰かに感心を寄せて話すなんて、海底遺跡がこの海の底で発見されたっていうくらい驚くことだ。

私はその海底遺跡を見つけられずにいつまでもうろちょろ泳ぎ回って岩にぶつかり、流血する。

それが目に見える。


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