キミと、光の彼方へ。
「良かったよ。人に感心が無さそうでいっつもつまんなそうに生きていた海里が、やっと好きな人を見つけられて」

「珠汐奈、無理して笑わなくていい」

「無理なんてしてない。私、本当に嬉しいんだから。大丈夫。心配しないで」

「分かった...」

「うん...」


波がザブーンと寄せて、ざざーっと引いていく。

その音を悲しんでは行けない。

私は乗り越えなければならない。

乗り越えるって決めたのだから。

私は目を閉じて深呼吸を1つした。

脳裏に私の瞳が写し取った様々な海里がフラッシュバックしてきた。

どんな時もカッコ良くて、私の憧れであった海里。

時に見せる笑顔と優しさに私は何度も救われてきた。

海里の心の真ん中に私がいることはなくても、私の心の真ん中にはいつも海里がいた。

海里がいたから、私は生きてこられた。

だから...だから、ね。


「海里、ありがと」


精一杯笑って感謝の言葉を述べた。


「これからも私の良き幼なじみでいてくれる?」

「ああ、もちろん」

「じゃ、またよろしく」

「こちらこそ」


私は涙を必死に堪え、海里の顔を真っ直ぐ見つめた。

普段滅多に笑わない海里が少し歯を見せて爽やかな笑顔を見せていた。

私はその笑顔を見て思った。

終わって、始まる。

それが、今日、なんだ...。

凪いでいた潮風がぶわっと勢い良く吹いてきて、私の涙をさらっていったのだった。

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