キミと、光の彼方へ。
「ただいま」

「お姉ちゃん、おっかえり~!お母さんとお父さん帰ってきたよ~」

「お母さんたち居間にいる?」

「うん。お母さんの体調良くなってきたってお父さん言ってた」

「うん、分かった。砂汐奈、教えてくれてありがと」

「どういたたまして~」


いたたまして?

小さい子あるあるの1つ、言葉が少しおかしい。

勝手に自分の言いやすい言葉に置き換えてしまう。

私も昔、良く言い間違えをしていた。

いつの間にか、正しい言葉遣いが出来るようになったけど。

正しい言葉を身に付けられたのも、母のお陰だ。

私は洗面所で手洗いうがいをすると、居間に向かった。


「あら、珠汐奈。お帰り」


母の穏やかで優しい声に、鼻の奥がつんとした。


「お帰り、珠汐奈ちゃん。お墓参りありがとう。お父さんは今から行くから、お母さんのこと頼んでもいいかな?」


探りながら生活をしているのは、瀬代さんも同じだ。

私の尖った態度に毎日屈せず話しかけてくる。

そして、今も背伸びして父親になりきろうとしている。

そんなことやっても無駄だって分かってるのに。

私の心の中で生きている父を越えられないって分かっているのに。

それでも、私と繋がろうとする。

それがうざくて、私はずっと避けてきた。

だけど、それはきっと間違っていた。

間違っていたと、気づいていて気付かないふりをしていただけなんだ。

そんなふりはもう止めよう。

次へ進もう。


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