キミと、光の彼方へ。
「拭けたか?」

「このくらい幼稚園生だって出来るよ」

「だろーな」

「だから、その程度のことなら自分でやるって」


と、私が言うとまたキリッと睨まれた。


「人に甘えること、覚えた方がいい」

「えっ?」

「そりゃあ、桑嶋さんは何でも自分でやって来たから何でも出来るとは思う。けどよ、たまには甘えてもいいんじゃねえの?」


碧海くんは慣れた手つきで消毒液をコットンに染み込ませる。


「ま、甘えられるほど、頼れるヤツもいないんだろうけど」

「いや、そんなことは...」


ないって言おうとした時に、消毒液のつんとした独特の匂いが迫ってきて、同時に痛みを伴った。


「いたっ」

「わりぃ。大丈夫か?」

「うん、大丈夫...」

「......ほら......な」


目を伏せながら私の傷口を拭いていく、碧海くん。

なんか、ちょっといつもと違うように思えるのは、気のせい...だろうか。


「俺じゃ頼りになんねーもんな」

「えっ?」


絆創膏の包装をビリビリと剥がし、ペタリと貼り付けた。


「よしっ、これで終わりっと」

「ありがと」

「どういたしまして」


碧海くんの背中に影が見える気がする。

もしかして...まだ跳べてないのかな。

それでちょっとイライラモードなのかもしれない。

私はどうやら、バッドタイミングで来てしまったようだ。


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