キミと、光の彼方へ。
―――バシャーンッ!


その直後、水中から会沢さんが思いっきり飛び出してきた。

水しぶきも、彼女の横顔も見とれてしまうほどに美しい。

キラキラして宝石が浮いているような真っ青な海と髪の長くてスタイル抜群の少女。

改めて思う。

本当に人魚姫だ...。

こんなにも海と太陽に好かれる人を私は初めて見た。

私にはないものばかりで、見ていてハッとする。

この煌めきと比較されたら、そりゃ私は霞んでみえる。

彼女が宝石ならば、私は石ころだ。

どこにでもあるような、価値のない石ころなんだ。

首にかけてきたネックレスを見る。

真珠と言ってもよく穴を開けられたなと思うほどに小さい。

真珠のように、白くて儚いけど、美しく輝いてほしい。

そう父が願って名前を付けたと去年母から聞かされたけれど、残念ながら父の願い通りの女の子にはなれていない。

変わろうと思って頑張っても嫌なことがあると、すぐに楽な考え方に戻ってしまい、結局何も変われていない。

むしろ、どんどん卑屈になっていく。

苦しいことを思い出すばかりで、ため息をついては自分の殻に閉じこもる。

それが今の私。

この海に眠っていたとしても、父に会わせる顔がない。

私は海から目を背けることしか出来ない。

暗くて濁りきった感情で心が満たされてしまいそうになり、ふと顔を上げるとふわっと潮風が吹き寄せて来た。

肌をなで、心の隙間に吹き込む。

そして、目を閉じ海の香りを目一杯吸い込んだ。

ん?

この香り......。


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