キミと、光の彼方へ。
「桑嶋」

「うわっ」

「何驚いてんだよ」

「いや、だって突然来たから」

「とか言っておきながら、本当は水も滴るいい男とか思ってるんだろ?」

「そんなこと、これっぽっちも思ってないから」


顔を背けた後、体育座りをして、膝の上に顎を乗せた。

このスタイルがなんとなく落ち着く。


「なあ、ビーチバレーならやるよな?」

「まぁ、水に入らなければなんでもやる」

「んじゃ、それはちょい後で」


そう言うと彼は私の隣に腰を下ろした。

磯の香りの中に、確かに感じる香り。

幾度となく、鼻を刺激して私の心臓に誤作動を起こさせてきた香りをすぐ隣に感じる。

この香りをふとした時に思い出しては心がキュンと狭くなる私は、きっとどうかしているのだと思う。

どうかしている私は、息をするのも躊躇うほど、呼吸が苦しい。


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