キミと、光の彼方へ。
父と分かれ、私は校庭に足を運んだ。

面談中でもそれらしき音が聞こえて来ていて、先生の話が上の空になっていた。

彼は今日もあのバーを越えようと真摯に向き合っている。

それもそのはず。

数ヵ月後、AO入試で体育大学を受けるのだから。

アスリートは厳しいと悟ったらしく、今の目標は体育教師。

なんか、すごい熱血教師になりそうだなって想像したら、笑いが込み上げてきた。


「おい!珠汐奈!」


笑う門には彼来る。

軽々と1本、バーを飛び越えると疾風のごとく私の元へやって来た。


「何笑ってんだよ」

「べっつに~」

「べっつに~じゃねぇだろ?!嘘つくな!教えろ!」

「そこまで言うなら仕方あるまい。言ってあげよう」


背伸びをして耳元で囁く。


「将来有望熱血体育教師」

「なんだそれ?!お前、俺の夢、バカにしやがって!」

「してないし」

「してるから、こういう発言が出るんだ。ったく、言葉を選んで話せよな」


私の背後に感じた。

彼はそっぽを向いたから気づいていないみたいだ。


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