キミと、光の彼方へ。
「はい、じゃあ2人1組でストレッチ!」


そこでまたハプニングが起きた。

私のクラスは男女が15人で、男女1人ずつ余るのだ。

私の体が、まるで魔法で凍らされてしまったかのように動かなくなった。


「桑嶋さん、よろしく」

「うん...」


5メートル先から感じる視線。

身長順に並び、女子の3列目にいる砂良からだとすぐに分かった。

しかし、抵抗することも出来ないからこのまま進めるしかない。

私はポケットに突っ込んでいたお気に入りのハンカチで汗を拭った後、碧海くんに手を差し出した。


「私体固いからあんまり引っ張らないで」

「りょーかい」


忠告の甲斐があったからか、私の体は程よく伸ばすことが出来たと思う。

中学生の時は、体操をやっている子とペアになってしまって、あまりの固さに笑われてしまった。

そのくらい体はガチガチ。

それは両親からの濃い遺伝だ。

短時間のストレッチでどうにかなるものではない。


「桑嶋さんホント固いな」

「イヤミ?」

「ごめんごめん。ご機嫌斜めだったんだった!ははは」


ニタニタ笑いやがって...!

この人は完全に私をバカにしてる。

こうなったら、もう、仕返しだ。

私は彼が曲げている背中を思いっきり押してやった。


「いっ、たー!!何すんだよ?!あいたたた...」


腰を押さえながら私を睨み付ける碧海くん。

ふんっ!

自業自得だ。

私は碧海くんにお小言を言われないうちに全体集合をかけた。


「元に戻って下さ~い!」

「くっそぉ、後で仕返ししてやる」


声に出してはいなかったけど、口の形で推測出来た。

仕返しされても倍で返せばいい。

碧海くんはそれを許される人だ。

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