キミと、光の彼方へ。
私は慌てて視線を反らし、モップを強く握りしめてその場を離れた。

さっき拭いたはずの場所をもう一度ゴシゴシと拭く。

まるでびしょびしょに濡れた自分の心を乾拭きするみたいに...。


「桑嶋さん?」

「何?」

「そこさっきやった...」

「知ってる」


私がそう言うと、碧海くんがモップを掴んできた。


「もう一通り終わったし、帰りな」

「でも掃除用具のチェックがまだだし...」

「そんなの1人いれば十分だ。顔色悪いし、今日のところは俺に任せて帰った方がいい」


頼りにならないし、こんな気持ちだからって帰りたいわけじゃない。

砂良に話を聴いてもらいたいけど、生憎部活に行ってしまった。

今日はどこにも心の船着き場がない。

そうなると、選択肢は1つ。

...帰宅。


「分かった。後はよろしくお願いします」

「おう。じゃあ、また明日」

「うん。また明日」


私はモップを碧海くんに預けて、スタスタと体育館を横断して去ったのだった。

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