キミと、光の彼方へ。
「はぁ...」

「お~い、何ため息ついてんだよ」


声に背筋がぴくっと動いて、私は恐る恐る後ろを振り返った。


「何でここに...」

「前言ったじゃん。俺、ここの常連。去年から桑嶋さんのこと見てるって」


また勘違いさせる発言。

言葉の選び方に気をつけて頂きたいものだ。


「品出し手伝おっか?」

「手伝われたら私が注意されるよ」

「確かに...。なら、俺に何が出来る?」

「えっ?」


碧海くんは、一体何を言っているのだろう。


「最近の桑嶋さん何か元気ねえから、一応俺なりに心配してるんだよ。何か力になってやりたいなって思ってさ...」

「私のことは気にしないで。何かあったらちゃんと砂良に相談してるし、大丈夫だから」

「でも...」

「それよりもう遅いし、早くお会計して帰った方がいいよ。ほら早く」


碧海くんに話す理由なんてない。

碧海くんには関係ない。

私のことは知らなくていい。

私も碧海くんを知らなくていい。

うん......それでいい。


「分かった。んじゃあ...また明日な」

「うん」

「気をつけて帰れよ」


知ってほしくないなら守るしかない。

自分の秘密も、

今のキョリも。


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