キミと、光の彼方へ。
「お疲れ様です」

「あぁ、みゆちゃん、お疲れ~。これ、あおちゃんから。2人知り合いだったなんてあたし知らなかったわ~。じゃ、あたしはこれで。またね」

「あっ...はいっ」


柳生さんから受け取ったのは見覚えのあるレジ袋だった。

ハマグリがお家の中に入っているみたいなロゴが書かれている。

間違いなくさっき買ったやつだ。


「何で...」


何で分かるんだろう...。

レジ袋の中には私の大好きな、幼児用の乳酸菌飲料が入っていた。

子供の時からずっと飲み続けていてお弁当の後にはデザート感覚に必ずこれを飲む。

もしかして、ベランダにいるから校庭から見えていたのかもしれない。

こんなピンポイントで当ててくるなんてさすがにスゴすぎる。

私の心を見抜けるエスパーじゃない限り無理だ。

私はストローを刺して一気に吸い上げた。


――しゅぽっ!


この音がたまらなく好きで、この、甘いけど後味は爽やかな感じが好きなんだ。

なんか悔しいけど、今...嬉しい。

すごくすごく嬉しい。

じんわりと体内に優しくて暖かい気持ちが循環していく。

砂良はあんなこと言ってたけど、私はそうは思えない。

碧海くんはキョリの取り方が変だけど、悪い人じゃない。

心の真ん中では嫌だって思うのに、端っこの方からじわじわと、彼に心を許してもいいんじゃないかっていう気持ちが迫ってくるんだ。

私には何も分からない。

分からないから、

仕方ないから、

ちょっとだけテキトーに生きてみる。

何も考えずに、

その時思ったことに従って生きてみよう。

だから、私は、ほんの少しだけ、碧海くんに近付いてみる。

ふと、そんなことを思ったのだった。

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