キミと、光の彼方へ。
「海里...」


私の視界のど真ん中にハッキリとその姿は映った。

扉の先で屋根から音楽を奏でて落ちてくる雨粒を見つめてぼーっとしている。

もしかしたら、海里は傘を持ってきていないのかもしれない。

いつも自転車登校だし、今朝は雨が降っていなかったから持ってこなかったのだろう。

こういう時、私はどうするべきなのかいつも考えてしまう。

傘を貸すのか、はたまた同じ傘の下で帰るのか。

迷っているうちに時は流れて、大抵は海里がびしょ濡れになって走って帰るのを見届けるんだ。

そんなの私の意に反している。

そんなこと望んでない。

そう思っていたとしても、私は何も出来ない。

本当はすごく簡単なことなんだ。


――海里、今日は部活ないんだね。

――傘持ってないの?

――なら、一緒に帰ろう。


そう言えばいいだけ。

なんて言われるだろうとか、断られたら後で話しかけるときに気まずいなとか、そんなこと考えないで......

考えないで......

動くべき......

なんだ。


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