キミと、光の彼方へ。
「ってかさ、桑嶋さんってめっちゃいい人だよな」

「えっ?どこが?」

「傘、1本しかないって分かってて貸したんだろ?」

「まぁ」

「自分を犠牲にして他人のピンチを救うってカッケーよ。マジでそれはすごいと思う」

「別にそんなことない」


と、私が言うと碧海くんは急に立ち止まった。


「何?」

「別に、とか、そんな、とか使うなよ。俺は心から桑嶋さんを誉めてるんだ。なら、ありがとうって素直に受けとれよ」

「でも、私...」

「俺が認めてる。桑嶋さんがカッコ良くて優しくて友達思いの、心底いいやつだってもう十分分かってるんだよ。だから...もっと自信持て」


さすが陸上部。

熱い言葉がお好きなようで。

私がいい人だったら、碧海くんはいい人過ぎるよ。

私のためにこんなに熱くなってくれる人、きっと初めてだ。

記憶の中に碧海くんを越える人は今だかつていない。

私は前を見たまま、一言呟いた。


「ありがとう...」

「お、おう」


照れ臭いのはお互い様だった。

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