キミと、光の彼方へ。
その後は沈黙がしばらく続いた。

次第に雨が止んで来て傘に打ち付ける音が弱まってきた。

傘を握る自分の手と足元を見つめながら、並んで歩く碧海くんの呼吸のリズムを感じていた。


「俺さ、去年この島に来たんだ」

「そうなんだ」


雨の収束を感じ、無くなった音を埋めるためなのか、碧海くんが話し出した。


「こっちで親戚のおじさんが民宿やっててそこに住まわせてもらってる」

「へぇ」

「ここに来たのは...そうだなぁ......リセットするため、かな」

「リセット?」

「あぁ」


碧海くんは立ち止まり、荒波みが何度も打ち返す大暴れの海を見つめた。

彼の瞳は今までみたことがない色をしていた。


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