キミと、光の彼方へ。
そうこうしているうちに碧海くんはゆっくりと再び歩き出した。

私はその背中を追いかけ、並んで、そして慌てて傘を真ん中に差した。


「桑嶋さんが濡れるからいいよ。俺のことは気にすんな」


傘の柄を持ち、私の方に押してくる。

私は......止めた。

かすかに碧海くんの口元から歯が見えた。


「気にする......。だって......碧海くんは今私の1番近くにいるから」

「えっ?」

「私のために色々犠牲になってくれてるのに、私だけ濡れないなんて、そんなの不公平だよ」


私がそういうと、碧海くんは口の形を変えてニカッと笑った。


「不公平じゃねえよ。俺、さっき桑嶋さんに過去をぶちまける最大級のミスを犯しちまったし。まぁ、言ってみればおあいこだな」

「でも......」


私が言葉を吐き出す前に、碧海くんが先手を打った。

私の頭にポンと手のひらを乗せて、私の視界のど真ん中に入り込んできた。


「悩んだり、苦しくなったりするのは、一生懸命生きてるからだ。桑嶋さんはすっげえ一生懸命で、俺はそういうとこ、すっげえ良いと思う」


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