キミと、光の彼方へ。
「桑嶋さん」

「あっ、はいっ」


声の方に振り向くと、部長さんだった。


「今日は手伝ってくれてありがとう。もう大分キレイになったし、後は部員でやれるから大丈夫だよ」

「分かりました。では、私はこれで...」

「ちょ、ちょっと待って。これ、お礼のジュース」


部長さんが渡して来たのは、全国的に有名なサイダーだった。


「わざわざありがとうございます」


サイダーは苦手だから、砂汐奈にあげよう。

掃除をして体温が上がっていたから、この冷たさは丁度いい。


「あ、あと、桑嶋さんが知りたければ、だけど......」

「えっ?」

「海里と美海(みう)ちゃんのこと教えるよ」


私は頭の先から下に向かって順に血の気が引いていくのが分かった。


「桑嶋さん?」

「はい...」

「えっと...おれの勘違いかな?てっきり桑嶋さんは海里のこと好きなのかと...」

「あっ......えっと......その...」


好き、だ。

好き、だけど...。


「いや、なんかごめんね。デリケートな問題をグサグサ聞いちゃって。ごめん。もう帰っていいよ。お疲れ様~...」


部長さんが去っていく。

...ダメだ。

こんなんじゃ、ダメだ。

逃げてちゃ、ダメだ。

好きなら、

好きだから、

ちゃんと向き合わなきゃダメなんだ。

私は勇気を振り絞って声を張り上げた。


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