キミと、光の彼方へ。
「そういやさぁ、今年も祭り行く?」


砂良の頭の中はどうやらもう夏休みらしい。

海里と私のことなんて気にかける暇はないようだ。


「うん。今年は14日だよね」

「さゆちゃんも来るよね?」

「うん。今年もたくさん金魚釣るんだってここ最近毎日言ってる。釣るんじゃなくてすくうなんだけどね」

「あははは!さっすが、さゆちゃんっ!笑いのセンス、おじさん譲り!......あっ」


砂良が口を結んだ。

それはきっと、無意識に私が顔をしかめてしまったからだ。


「ごめん、珠汐奈。アタシうっかり...」

「大丈夫。気にしてない。それより、さゆのこと、なんでそんな気にしてるの?」

「ああ、そうそう。実はさ、琉太がね、さゆちゃんを狙ってて...それで......」


私の耳から砂良の声が消えていった。

奪われた心は海の底に沈んでしまったかのように、全てのものを遮断した。

私は思い出していた。

あの日、あの時、この教室からも見えるあの大きくて真っ青な海に沈んでいった船と......

父を。
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