キミと、光の彼方へ。
「お詫びとして、夏祭りちゃんと来てね。アタシ達の荷物持ちやってもらうんだから」

「それとこれとは関係ないだろ」

「関係ないとかなんとか言わないで、男なら女性に優しくするのが礼儀でしょーが」


砂良はすごい。

言いたいことをズバズバ言う。

私は言いたいことの半分も言えないで飲み込んでしまう。

それでもいいといつも諦めてしまう。

それが悪いって分かっていても私は直せない。

ううん...直さない、のだ。


「申し訳ないが、俺は水泳部の人達と行くことになってるから一緒にはいけない」

「へえ~、そうなんだ~。もしかしてそこに海里の愛しの人がいたりして~」

「砂良!」


砂良はさらさら悪気はない様子。

当の海里は目をしばたかせ、箸を置いてキョロキョロと目を泳がせている。

こんなことで泳ぐのが得意でも、なんの役にも立たない。

むしろ、弊害だ。


「海里が女の子と一緒に歩いてるの見てるんだから、言い訳しないでちゃんと答えて。あの子誰?好きなの、嫌いなの?なんなの?」


この場から抜け出したい。

そう思うのは、私も海里も多分同じだ。

触れてほしくないのが分かるから触れられなくて、触れて傷付くのが自分だって分かってるから触れなくて...。

そうやって私と海里はここまで来てしまった。

流れに身を任せたまま海を渡り、辿り着いたのは、今まで回避してきた未開の島だった。

到着して最初の1歩は、きっとすごく重い。

海里はなかなか足を踏み出せないまま沈黙が続いたけど、誰も引かなかった。

やがて、海里は意を決して口を開いた。


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