星愛〜それでも僕は君が好き〜
「ちゃんと彼女ですって言っといた。」
「まじか?!」
驚きで起き上がった俺にびっくりしたのか少しビクッとする一花。
一瞬で無表情に戻ったかと思えば俺を見てニヤッと笑う。
…なんか悪巧みしてそうな顔だな。
「…回復したら家まで送りますって言っといたから早く治しなよ。」
「はい。ご迷惑おかけします。」
会社の人なんで一花に電話したのかって思ったけど仕方ないわなあ…
俺の通話履歴には両親はいないから。
いても姉貴くらいだな。
殆ど一花としか通話しないもんなあ…
「…はい、お粥。」
「ありがとう」
ホカホカのお粥。
「卵粥だけどいいよね?」
「梅粥より断然好き。」
「そう。」
一花は俺にお粥を渡すと洗濯物を取り込み始めた。
俺がいるだけで一花は普段通りの生活をしているようだ。
「…汗かいてるでしょ。」
「…ん、まあな」
「シャワー浴びる?」
洗濯物を畳みながら視線を俺に向ける一花。
「入りたいけど俺替えの服ないよ。」
「いいよ、私お父さんの着替え一式持ってるからそれ使えばいい。」
…お父さんの着替え一式…
「お父さんよく遊びに来るから着替え一式だけ置いてあるの。
最近来ないから処分しようと思っていたところ。」
お父様の…
仲良い親子なんだな…
すみませんお父様、お借り致します。
「お風呂の使い方は多分一緒でしょ。
じゃあはい、行ってらっしゃい」
着替えを貰って若干フラフラする頭でお風呂場へ。
…部屋もそうだけど…
なんか、何も無いんだな…
必要最低限何も無い家。
「…」
一花はいつも、この家で1人で過ごしているのかな…
寂しくは、ないのかな。
…俺だったら寂しくて居られない。

「ー…さっぱりした…」
「ん。出てきた。軽くご飯作ったけど食べる?」
「食べる。」
風邪の時でも食欲はあるんだ。
おさっきお粥食べたばかりのはずなのお腹が空いている。
「あんまりガッツリ食べないようにね。
少なめにしときなよ。」
「はーい」
なんでも出来るな、一花は…
「…いただきます。」
「どーぞ。」
一花が作ってくれたのはふわふわのオムレツにお味噌汁、ご飯。
和風な感じがするけどオムレツがあるからあ和風って感じがあんまりしない。
しかも美味しい。
「オムレツ作るの上手いな」
「そりゃ職場で作り続けていますから。
お店に私しかいない時あるもん。」
「まじ?!」
あのお店に1人で…
1人でフロア兼キッチンにいるのか…
「大変じゃない?」
「んー…」
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