二人の距離~やさしい愛にふれて~
「俺たち二人で少し散歩して来ます。30分くらいで戻りますね。」

恭吾は恵子や陽斗に伝えると理花と病室を出る。
途中、ナースステーションに寄り二人で中庭に出る事を伝える。性的接触は禁止されたが二人きりになることをあえて禁止はされていなかったが念のために看護師に報告をしておいた方がいいと思ったのだ。

「恭ちゃん、会いに来てくれてありがとう。スッゴく心配かけて本当にごめんなさい。」

中庭のベンチに並んで座ると理花は改めて恭吾に頭を下げる。

「理花のせいじゃないよ…。お前が一番辛いんだ。お礼も謝罪もしなくていい。生きてて本当に良かった。」

恭吾は胸が詰まり、理花の頭を抱き寄せる。理花は恭吾の声や匂いに心が穏やかになっていくのを感じた。

「今でもね、男の人に汚されていないと喉が焼けるように熱くなって胸が苦しくなるの…。誰かと話をするときっと頭おかしいこと言い出して、叫び出す気がして怖い…。でも不思議と恭ちゃんと一緒だったらセックスしなくても大丈夫だったし、今も喉も胸も大丈夫なの。」

「そっか、俺勢いで来たから迷惑じゃないかってちょっと不安だった。」

理花の気持ちを聞けて恭吾は自分の行動が間違ってないと思えて嬉しかった。

「二人しかいない世界があればいいのに。恭ちゃんが誰かに取られる不安もパパやママに感じる後ろめたさもないのに。」
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