二人の距離~やさしい愛にふれて~
「俺は誰にも取られねぇよ。毎週は難しいけど会いにくる。家族に感じることは本人たちにぶつけてもいいんじゃないか?辛いよな…辛くて当たり前だからこそ吐き出しちゃえよ。」

理花はこちらに転院してきてから胸に押し込めていた家族への後ろめたさを初めて誰かに話す。草野にさえ話したことがなかったのだ。
その気持ちを恭吾から受け止めてもらえた気がしてまた涙が溢れだす。

「私ね、中学校から女子校に通ってて、大学で優しく声を掛けてくれる男の先輩を信用しちゃって…好きになったの…。そしてね、騙されちやった…。」

「そっか…」

恭吾は何と声をかけて良いかわからず理花の頭を抱きしめたまま胸を痛めていた。

「く、苦しいよぉ。」

しばらく二人はくっついていたが理花が苦しそうにもがいて頭を上げる。

「あぁ、悪い…。」

「恭ちゃんまでそんな顔しないで…」

恭吾の苦しそうな顔を見て理花は胸がそわそわと落ち着かなくなる。

「そうだよな…ただこれだけは信じて、俺は理花を傷つけない。」

真っ直ぐと理花を見る恭吾の目は真剣だった。

「……うん。信じてる。」

その日は面会時間の20時まで一緒に病室で過ごし、一旦家に帰っていた陽斗が迎えに来て恭吾は理花の実家に連れて行かれた。

「今日はうちでゆっくりしたらいいよ。うちの父さんも理花の話を聞きたがっとるし。」

「……すいません、助かります。」

正直恭吾は気まずさが大きく返事に詰まるが、理花のことを心配でたまらないがなかなか顔を出せないであろう誠一の気持ちが軽くなるならと泊まることにした。
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