二人の距離~やさしい愛にふれて~
「いらっしゃい、今日は本当にありがとうございます。理花があんなにしゃべったりするのが見れて、なんとお礼を言っていいか…」

玄関で出迎えてくれた恵子は涙ぐみながら改めて恭吾に深々と頭を下げる。

「いえ、あんな感じで良かったのかわからないんですけどお礼を言われるようなことは何もできなかったです。逆に昨日から泊まるところを用意してもらったり、理花に会わせてもらえてお礼を言うのは俺の方です。ありがとうございます。」

頭を下げ合う二人を見て陽斗もつられて頭を下げる。

「さぁ、中に入って。どこで寝る?客間でもいいし、俺の部屋でもいいぞ。」

「あんまり気を使いすぎて疲れるやろうけん、客間でゆっくりしてもらったらいいんやない?」

「まぁ、そっか。俺はまだまだ恭吾と話をしたかったけど…確かに疲れとるか。」

陽斗は残念そうにそう言うと先にリビングに入って行く。

「ごめんね、陽斗も恭吾君にはあぁやけど随分塞ぎ込んどってね。あの子の笑顔も久々見たんよ。」

理花の事件で理花の身になにがあったか知らされてからというもの、長谷川家では笑顔が消えていた。
変に詮索してくる人もおり、悪気がないとわかっていても理花の話を誰にも話したくはないからとできるだけ交友関係も絶っていた。

「俺なんかに何ができるのかって悩んでたんで、来ただけなのにそんな風に言ってもらえてうれしいです。」
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