二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾がリビングに入るとテーブルに軽めの食事が用意されていた。

「恭吾は理花とコンビニのおにぎりしか食べとらんやろ?弁当にも入っとった煮物やけど食べよう。父さんも帰って来よるみたいやけん食べて先に風呂入っとき。」

「ありがとうございます。これ美味しかったからまた食べたかったんですよ。うちの母さんのと味が違って少し甘いんですよね。甘いのは苦手なんすけどこの甘さは好きっす。」

「九州の醤油が甘いんよ。気に入ってもらえたらよかった。良かったらお母さんに九州のお醤油お土産に持って帰って。」

「いやいや、醤油って重たいやろう。送ったらいいよ。」

「そんな、いいっすよ。悪いです…。」

そんな話をしながら用意されたご飯を食べ、おかわりまでした恭吾は言われるがままにお風呂に入る。
ゆっくり湯船につかってふと今の状況に笑いが出る。昨日の夜は理花と会う緊張や期待や不安でゆっくりした感覚がなかった。でもまさか自分が理花の実家のお風呂でくつろぐなんて想像もしていなかった。

初めこそ罵られたがあんなに優しい両親と兄に囲まれてきっといい子に育っただろう理花にあんなことが起こるとはきっとみんなが辛いだろう。
これからこの家族はどうなれば幸せになれるのだろうか。過去を消せるわけではない。

恭吾のついたため息は浴室に響いた。
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