二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾がお風呂から上がると誠一は既に帰宅しており、リビングでご飯を食べていた。

「いらっしゃい、恭吾くん。今日はありがとう。母さんから理花が笑ったって聞いたよ。」

「お邪魔してます。ははっ、理花そんなに笑わなかったんですね。」

恭吾は自分にしか笑わないし、話もあまりしないと草野も言っていたことを思い出す。
理花は変なこと言い出しそうで怖いと言っていた…。家族に後ろめたさを感じているとも…。草野にはこっそり伝えてはきたが自分の口から理花の家族に伝えていいものか迷う。
理花は自分を信用して話をしてくれているのにペラペラと話をしていいものか…。

「元々理花は大人しい子でね、人前ではあまりはしゃぐ子じゃなかったよ。でも家族や仲の良い友達とはよくしゃべってよく笑う子でね…」

「そっか…会いたかったな…。じゃあもしあんな事件がなかったら俺なんか声もかかってなかったですね…。きっと避けられる部類かな…?」

「それはどうかな?理花は理花やから恭吾くんには何かしら感じることがあるんやろうし。実際今は君に救われとるよ。父親なんて無力やけん…。」

誠一は寂しそうに笑うと手元のお茶を飲み干す。

「救えてるといいんですけど…。」

「何言いよるん。あんな理花は久しぶりに見たよ。救われとるよ。」

気付くと陽斗が後ろに立っていた。手にはビールの缶が乗ったお盆を持っている。

「おぉ、恭吾くんはお酒飲めると?」

誠一は恭吾がまだ成人していないのではと思っているようだった。
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