二人の距離~やさしい愛にふれて~
「…理花、ひとりで、ひとっ、ひとりで頑張って、ったんやね。」

理花の話を聞きながら恵子はしゃくりあげそうな程泣いており、必死に理花に気づかれないように隠そうとしていた。

「出来んかったの…勉強しようとすると吐いて、食べれんくて…寝るとあの日の夢を見るの。汚いって、全部汚れてるって…まともに誰とも付き合えないって、子供も、子供もこんな汚い穴から生まれてくるから汚い子しか生まれないって…」

理花は興奮しており肩で呼吸しながら、最後は大声になっていた。

「……っう、そんなっ、そんなことない。そんなっ…」

恵子は怒りと悲しみで震えながら必死で否定する。我を失いそうなほど酷い言葉に必死で理性を保ち、震える手でナースコールを押していた。

すぐに看護師が駆けつけてくれ、興奮している理花を見るとすぐに草野を呼ぶ。
草野とカートを押して看護師が入って来ると手際よく理花の肩に注射を打っていた。

草野は理花が落ち着いたのを確認し、恵子と話をしようと隣へ座る。
恵子はソファに座り俯いて両手で顔を覆っている。そんな恵子の様子がいつもと違うことに気づいた草野は面談室へと恵子を誘った。

「今回の理花さんの興奮のきっかけは何か心あたりがありますか?」

「あの子の、理花の記憶を消すことは出来ないんでしょうか?あんなっ…酷すぎる…。」

「理花さんから事件の事で何か聞かれたんですか?」

「汚いって、汚れてるって…まともに…っうぅ」

恵子はまともに言葉が出ないほどに泣きじゃくり、それ以上なにも話せなかった。
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