二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾の告白に真は嬉しいやら、大吾への罪悪感やらで複雑だった。

「恭吾、ありがとう。本当は自分のいるべき場所じゃないことはわかってるんだ。でもあまりにもここは居心地がいい。独りよがりじゃなくてちゃんと必要としてもらえてる実感もある。だからこそ本当にありがたいし、幸せだよ。」

「そんなっ、ここはまこちゃんの場所だろ!俺こそオヤジがいなくてまこちゃんに甘えてて…まこちゃんに父さんを求めてた。…急にこんな話、ごめん。」

真は恭吾の目の前に行くとくしゃっと頭を撫でる。恭吾を見たあとゆっくりと大吾の写真へと目をやった。

「大吾…お前はやっぱり逝くの早すぎだよ。こんな可愛い子残して…お前にそっくりだろ?」

寂しそうに写真に話しかける真を恭吾は黙って見ていた。

「……恭吾、お前の父親はどう思おうと大吾だよ。この写真の大吾、お前にそっくりだろ?でも俺のこと家族として認めてくれてありがとうな。父親の代わりにもっと甘えていいし、わがままも言っていいんだ。ただ、大吾のこと、お前の父親のことも認めてやってくれないかな?」

真っ直ぐと恭吾の目を見て話す真の顔はやはり寂しそうだった。

「……うん。正直、オヤジの記憶ないし…なんだか遠い存在な感じがするんだ。」

その日真と恭吾は二人で少しお酒を飲みながら大吾の話をした。
真は大吾と茉莉が結婚する前からのアルバムをリビングに引っ張り出してきて恭吾と1ページ1ページゆっくりと眺めた。
恭吾は子供のころに何度か見たことあったが、改めてみると自分とそっくりな父親が確かに生きていたんだと少し近づけたような気がしていた。
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