二人の距離~やさしい愛にふれて~
その日、恭吾が生まれたばかりのビデオに一緒に移っている父親の姿を少し酔った頭で見ていた。

「ははっ、なんか不思議。声までそっくりだし、笑い方も…。なんだよ、死ぬなよな…。」

恭吾は画面の中の大吾にそう言うと目から一粒だけ涙が流れた。
真はそんな恭吾の頭を抱きしめる。

「大吾の子だけど俺が育てたんだ、父親みたいに親不孝だけはするなよ。そこだけは見習うなよ。茉莉さんが悲しむからな。」

大吾は高校を卒業してすぐに家出をしていたのだ。そのまま元気な姿で帰ることはなく、冷たくなってしまった姿で家族と再会したのだ。

「うん、まこちゃんの子じゃなくても同じ血は流れてるから大丈夫。母さんのこともまこちゃんのことも悲しませたりはしないよ。約束する。」

「あぁ、絶対だぞ。ところで恭吾、この話のついでに相談なんだが…俺と茉莉さん、籍を入れるってなったら嫌か?」

「へっ?籍って、結婚するってこと?」

恭吾はきょとんとした表情で真を見る。

「あ、あぁ…そういうことになるな。きっと興味本位で嫌なことを言われることもあると思うんだ…今後お前にも迷惑かけるかもしれない…」

「何だよそれ、まこちゃんとオヤジが兄弟だから?言いたいやつには言わせとけばいいよ。俺としてはやっとかって感じだよ。」

「ははっ、ありがとう、恭吾のことだけが気がかりだったんだ。まだ正式に茉莉さんには言ってないからこれは二人だけの秘密な!」

その日の夜は遅くまで二人で話し込んだ。
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