二人の距離~やさしい愛にふれて~
「あぁ、明日が休み。」

「まじか、じゃあ父さんと飲むわ。」

「そこは、明日一緒に飲もうじゃないのか?」

「え?だって今日食いたいもん。」

二人は冗談混じりに談笑する。最近は恭吾がふさぎ込んでいたのもあり、こんなに楽しく話をするのは久しぶりだった。

「ねぇ、私も混ぜてぇ。楽しそう」

談笑する二人の間を割って入ってきたのは程よく肉付きの良いスタイルのまりあだった。
まりあは恭吾と同じ学部で同じ講義のときに話をする程度に仲の良い子だ。

「一人?いつも一緒にいる奴らは?」

由彰はまりあの後ろを見渡す。

「さっきまで一緒だったんだけど恭吾たちが見えたから。何話してたの?」

「別に、とくには何も。」

理花の話を由彰意外とするつもりのない恭吾は内心面倒くさいと思いつつ返事をする。

「え~、さっきまで楽しそうだったのに冷たくない?私邪魔?」

まりあは決して残念そうではない表情で恭吾の横に座ると腕に自分の腕を絡める。
以前の恭吾だったら普通のことだったが、今は勝手に触られることに嫌悪感さえ湧いてくる。

「ははっ、まりあちゃんわかりやすいね。でも恭吾は今お疲れ中だからやめた方がいいよ?俺にしときなよ。」

由彰には恭吾の表情が曇ったのがわかり、おどけて言う。

「え~、ヨシくんって遊んでポイって捨てそうだから遠慮しときまぁす。」

「お前、くせぇ。」

恭吾は眉間にしわを寄せてまりあを押しのけ立ち上がる。

「えぇ、臭いってひどい!もう、お疲れなら私が癒してあげるわよ。」

まりあは負けずに立ち上がって腕を絡めてくる。
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