二人の距離~やさしい愛にふれて~
そんな二人を見ながら由彰は笑いながら眺めるが、恭吾が怒り出さないか冷や冷やしていた。
めったに怒ることのない恭吾だが、怒ると手が付けられなくなるのだ。

「うぜぇ、匂いが付くから触るな。」

恭吾はマリアを振り払うと構内へ入っていく。

「まじで今はやめといた方がいいよ。あいつそれどころじゃないし。」

「でも、私本気なんだけど?」

「残念だったね。慰めるくらいならできるからその時は声かけてよ。」

由彰はニコニコしながら手を振ると恭吾の後を追う。

その日から大学に行くとまりあに絡まれるようになり、恭吾はうんざりしていた。

理花には2週間後の週末しか会いに行けず、その間何度か陽斗に電話で近況を聞くくらいだった。

家に帰ると自分の発言のせいでふさぎ込んでる茉莉とはあまり会話もなく気まずい状態だった。
帰ってもおもしろくのでバイトのない夕方、恭吾は駅近くの繁華街をぶらぶらと歩いている時、由彰の父親の昌から電話がかかってきた。

「もしもし」

『おぉ、電話で話すとますます大吾にそっくりだな。ははっ、お前今日バイトないんだろ?飲みに行くぞ。』

「え?ヨシは今日バイトって言ってなかったっけ?」

『俺と二人じゃ不満か?』

「え、いや、不満じゃないけど、珍しいね。まこちゃんも最近忙しいしアッキー淋しいんだ?」

『まぁ、たまにはいいだろ?○△駅の南口な、うまい焼き鳥屋があるんだ。じゃあ、すぐ来いよ。』

言いたいことだけ言うと昌は電話を切った。恭吾は帰らなくていい理由ができ、喜んで茉莉にメールすると電車に乗りった。
< 116 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop